富山デザインコンペティション挑戦記~副業デザイナーがプロに挑んだ3カ月間~

富山デザインコンペティション挑戦記~副業デザイナーがプロに挑んだ3カ月間~

こんにちは!ハリボーです。

まずは一点告白させてください。

本ブログにおいて私はずっとデザイナーと名乗っていますが、実はプロのデザイナーではありません。

いわゆるアマチュアデザイナー、または副業デザイナーと呼ばれる存在に過ぎません。

学生時代の選考や本業はデザインとは関係なく、基礎を学んだ経験すらありません。

絵を描くことが好きだったこともあり、デザインは「趣味」としてLINEスタンプ製作など創作を続けていました。

しかし、結局自分がやっていることは自己満足でしかなく、経歴や誰かに認められたこともないということに少しもやもやを感じていました。

そんな私が「登竜門」というサイトを訪れたのは2020年の7月後半。

多くのデザインコンテストが開催されていることを知り、私が住んでいる富山県においてもプロダクトデザイナー達が競い合う大きな大会があることを知りました。

それが「富山デザインコンペティション」です。

富山デザインコンペティション2020

富山デザインコンペティションは富山デザインウェーブが主催。

毎年開催されており、グランプリには50万円の賞金が与えられます。

選考方法とスケジュール

以下、富山デザインコンペティション2020の選考方法を私が抜粋したものです。

出場を決めた私はまず8月31日までの1カ月間で作品シートを作ることにしました。

一次審査用に提出した作品シート

2020年のテーマは3種類。

  • テーマA 「化学強化ガラス」の新しい展開/三芝硝材株式会社
  • テーマB 色を着ける/株式会社タカタレムノス
  • テーマC 「かたづける」をデザインする/株式会社リッチェル

この中から私が選んだものは、「片付け」のテーマです。

便利なゴミ箱が欲しい気持ちを込めた作品シートがこちらです。

タイトルはtrash(ゴミ箱)のポップなイメージで「Patrash」としました。

(画像は解像度を落としています)

Adobe dimentionを使った3Dモデルで雰囲気を出しました。

一人で複数作品を応募できるということで、1枚だけではなかなか通らないかもしれないと思い、ついでにもうひとつ作りました。

こちらは「化学強化ガラス」のテーマを基に、私の好きな風車で作品を作りました。

透明な風車があれば立山が綺麗に見えると思い、「トヤマスタイルマイクログリッド」と名付けました。

以上2作品を応募しました。

応募がメールでなくA3印刷+郵送だったのが多少面倒でした。

一次審査結果、なんと…!

9月11日にコンテスト事務局のホームページにて一次審査結果が発表されました。

その結果、なんと

ついでに応募した方の作品が選出されました。

とにかくファイナリストになったということで、他の方々の作品が間近で見れる貴重なチャンスを貰えたことにワクワクが止まりませんでした。

デザインを洗練する『デザインメンタリング』

一次審査から約3週間。

9組のファイナリストたちは作品をより良いものにするためにアドバイスを貰う「デザインメンタリング」を受けるために富山を訪れました。

新高岡駅に集合し、各テーマごとの企業さんを訪問、さらに富山デザインセンターで専門家からのアドバイスを頂きます。

テーマを用意した企業を訪問

この日私は「化学強化ガラス」がテーマの他2組と行動しました。

企業訪問は約1時間程。

普段なら入れない工場見学がとても楽しかったです。

また、私の他の2組はプロのプロダクトデザイナーであり、初めて聞くお話ばかりでとても刺激的でした。

デザインメンタリング実施

企業訪問後は高岡市にある富山デザインセンターにて内容のブラッシュアップです。

美術大学の専門家によるアドバイスが一人あたり1時間受けられる貴重なチャンスです。

「今あるものをガラスに置き換えるだけでなく、ガラスの特性を活かした工夫が欲しい」

「富山で取り組む理由が弱い」

「最終審査までに風車の模型を作ってくるのが良い」

など、具体的なアドバイスを頂きました。

デザインコンテスト初挑戦の私にはこの機会が非常にありがたかったです。

最終審査へ向けた準備とデザイン練り直し

メンタリング終了から最終プレゼンまで2カ月間。

この間にどれだけ準備ができるかが勝負です。

私が取り組んだのは、まず「ガラスならではの作品を作る」ことです。

富山ガラスを活かした風車の模型製作

曲げ加工が容易であることから、綺麗な球体の風車をつくれないかと思い設計したのがこちらの図面です。

こんな形状が本当にガラスで作れるのか。

不安を抱えつつも、あるガラス工房に依頼の上、メールで図面を送付しました。

しかし、工房からは現在も返事が返ってきていません

おそらく不可能過ぎる図面に呆れられたのでしょう。

ガラス作家の協力者探し

続いて私が行ったのは、Twitterで個人的に協力してくれるガラス作家さんを探すことです。

以下のような投稿をして少し様子を見ることにしました。

何人かの友人がリツイートしてくれました。

しかし結局ガラス作家さんは見つかりませんでした

方針変更と3Dプリンターによる模型作り

気付けば最終プレゼンまで1ヶ月。

のんびり準備している場合ではなくなった私は、方針を変更し省エネ作戦に切り替えました。

模型をガラスで実装することは諦め、簡易的に透明3Dプリンターで製作することにしました。

また、発表資料も本物のガラス風車にこだわることは止め、3DCGで透明感の雰囲気だけを表すことにしました。

CADで設計したデータを透明3DプリンタEDENで出力し、土台部分はSCOOVOで仕上げました。

回転すると街の灯りが光るようになっていますが、発電にこだわるのも止めました。

エンコーダで回転数を読み取ってArduinoから出力しているだけのシンプル構造です。

模型設計に5時間。

配線・はんだ付けに2時間。

プログラミング1時間です。

一番手間がかかったのがサポート材を削り出す作業10時間程かかりました。

これは完全に設計ミスです。

3DCG『blender』による発表資料作成

模型作りの他にも苦労したのが発表資料作成です。

風車が実際に回転している様子をどうしても発表で使いたかったので、Blenderをインストールして一から3DCGを学びました。

立方体を動かすだけで一苦労でしたが、毎日コツコツ作って風車を回転させることに成功しました。

こうして発表資料と模型を完成させ、当日を迎えました。

運命の最終審査「富山デザインコンペ2020」開催日

12月3日、ついに全国からファイナリストが富山に集結しました。

会場は富山市役所の目の前に出来た大型施設、富山県民会館です。

ファイナリストたちは新幹線やサンダーバードで朝から訪れる中、唯一地元の私だけは開始直前のバスでゆったり来場しました。

審査員の紹介後に9組の発表です。

私は2番目でした。

「あ、これ勝ち目ねえわ」

最初に発表していたのは以前のデザインメンタリングで一度お話ししたプロダクトデザイナーの方でした。

ガラスの小物に関する発表だったのですが、発表中にもはや製品そのものともいえるクオリティ神レベルの模型が登場したのです。

しかも本物のガラスを使っている

厚さを数ミリずつ変えた各種のガラスを使った試験も行っていたと。

2番目の私は察しました。

これ、勝ち目ねえわ

最初の方の6分間の発表が終わり、2分間の質疑応答に入ります。

そこで審査員がめちゃくちゃ厳しい質問を連続パンチで浴びせます。

いやいや、完璧だったよ!?どうしてそんなに責めるの?

こっちはもっと穴だらけだって!

いよいよ発表のとき

そんな状態で気が気じゃないまま私の番になりました。

発表自体は十分に練習したこともあって、一通り終わったのですが、問題は終わった後です。

Q&A用に10枚ほどの回答用スライドは準備していたのですが、審査員の鋭い突っ込みに「うっ」となってしまい中途半端な回答に。

「ガラスで作るのはいいんだけど、透明で景観が守れること以外に利点はあるのですか?」

「…(景観を守ることからスタートしたんだけど、、それ以外で!?)」

「ガラスが高速回転しているのが怖い」

「…(CFRPの風車も結構怖いんだけどなあ…)」

こうして私の挑戦は幕を閉じました。

結果発表と所感

他のファイナリストたちはほとんどがプロのプロダクトデザイナーで、完璧な製品ともいえる模型を持参していました。

同じガラスのテーマだった私の他の2人が特にクオリティが圧倒的だった気がします。

発表資料内の動画もプロのイメージビデオといった感じでした。

9組の発表が終わり、公開審査の後に授賞式がありました。

グランプリは慶応大学のデザインチーム、準グランプリは3番目に発表したガラスがテーマの方でした。

ひとつ嬉しかったのは、審査委員長が私の作品について「今年で27回目になるコンテストですが、今まで一度も見たことがないタイプの提案だ」とコメントをくれたことです。

プロのデザイナーでもなんでもないただの一般人に対し、デザイン力だけではないコンセプトや理念などの部分でしっかり総合評価をして貰えたことがありがたかったです。

そして、今回の応募は256作品であったとのこと。

その中から9組に選ばれたことだけでも、奇跡かもしれないと思いました。

挑戦を通して得たもの

私はプロのデザイナーに正面から挑み、全力を出して、敗北しました。

その中でかけがえのないものを手に入れました。

プロのデザイナーと最終決戦まで張り合えたという”自信”

ファイナリスト作品を間近で見ることができた”経験”

3DCG技術やポスター作成・見せ方などの”デザインスキル”

思い知った”敗北と悔しさ”

私はまだまだプロのデザイナーには及びません。

もっともっと、自分自身を磨き、鍛えていく必要があります。

デザイン展開催のお知らせ

今回の富山デザインコンペ2020でのファイナリスト作品は富山県民会館にて展示されます。

私の製作した模型や作品シート、動画なども展示されますので、ぜひ訪れてみてください。

12月10日(木)まで。

※デザイン展は終了しました。

長文を読んでいただきありがとうございます。

製作した作品はこちらにも記載しています。

美しい景観を守る透明風車をデザインしてみた【富山デザインコンペファイナリスト作品】

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