富山市猿倉山にある展望台【風の城】の垂直軸風車を風車のプロが本気で考察してみた

富山市猿倉山にある展望台【風の城】の垂直軸風車を風車のプロが本気で考察してみた

こんにちは!

富山県のマイナースポット大好きハリボーです。

今回は富山市の南にある猿倉山へお出かけに行ってきました。

猿倉山には「風の城」と呼ばれる展望台があるそうです。

猿倉山にある展望台『風の城』へ

猿倉山は標高345メートルから富山平野を一望できるビュースポットです。

名前の通り野生の猿がたくさん生息しています。

森林公園にはのどかな芝生が広がり、ハイキングやバーベキューが楽しめるアウトドアフィールドとして知られています。

しかし私の目的はピクニックでもバーベキューでもありません。

山頂の展望台「風の城」にある「ジャイロミル型垂直軸風車」を見ることです。

はじめに記載しておきますが、筆者の風車考察風車愛によりかなりマニアックな情報が含まれます。

こんな長文記事でも負けじとついてきてくれる読者がいることを願うばかりです。

風の城のアクセス

猿倉山森林公園は富山市街から車で30分程度です。

風の城は駐車場から階段を登り10分ほどの猿倉山山頂にあります。

展望施設「風の城」の詳細

風の城はGoogleマップ上は「展望台」として表示されています。

2階建ての建物は1階が風力発電施設、2階部分が展望台となっています。

展望台としてもなかなか異色の雰囲気を放っています。

まずは2階に登って景色を楽しみます。

山頂に建っているだけあって、かなり遠くまで見渡すことができます。

富山平野の広さがわかります。

もう少し晴れていれば富山湾まで綺麗に見えそうです。

展望施設としての風の城の紹介はここまで。

続いて風車の考察です。

「風の城」にあるジャイロミル型垂直軸風車

1階の風力発電施設部分をじっくり見ていきます。

風車のスペックや発電量などのパネルがあればよかったのですが、ざっと回った感じでは見当たりませんでした。

風の城は展望施設としては観光名所化されていますが、風車の部分はなにも紹介されていないのが少し悲しいです。

なんとGoogle検索でもまったく風車のスペックに関する情報は出てきません。

というわけで、筆者が風車の外観から勝手に考察していきます。

発電効率を大きく左右する風車特性『翼形状』

まずはブレードの形状を確認していきます。

風車軸は地面から2階へと繋がる垂直軸です。

形状は翼枚数3枚の、揚力型風車のひとつであるジャイロミル型垂直軸風車です。

見た感じでは翼弦長は約200~300mm、翼幅は約2500~3500mm程度といったところ。

斜め上から見た風車です。

翼型は2次元翼、そして対称翼のような見た目です。

対称翼であることと翼厚から、翼型はNACA0015~0021あたりと推測します。

回転半径は目測1500mm程度です。

注目すべきは風車を覆う太い柵。

安全を考慮したとはいえ、これだけの柵に囲まれていたらかなりのカルマン渦が発生すると考えられます。

一般に、垂直軸風車の特性として風向に依存することのない点や乱流に強いというメリットが挙げられます。

その点を考慮しても柵の影響があまりにも大きそうです。

周囲にある階段や大きな負荷装置、インバータもかなりのノイズ。

このことから、施設周りに吹いている風と実際に翼に当たる風では風速の差が発生すると考えられます。

風車のカットイン風速推定

回転している様子を観察したかったのですが、残念ながらこの日は無風。

ただし風が吹いていたとしても、稼働中とは限りません。

回転していれば2階のガラス越しに内部の制御盤が見えたので測定電圧を見ることができそうでしたが。

しかし、階段にあるこちらの看板に有力な情報が含まれています。

風車のカットイン風速(起動風速)は2m/sであるとのこと。

抗力型風車に匹敵するカットイン風速です。

このサイズの揚力型垂直軸風車にしてはなかなかの性能ではないでしょうか。

ただし、私の読みでは2m/sでは起動しないと思われます。

根拠は以下の3点です。

  • 人が多く立ち入る展望施設という都合上、長年の振動で軸の垂直が保持できず、数ミリレベルの軸ブレを起こしている可能性が高い
  • 柵の影響によりカルマン渦が発生し、翼に当たる風速は周囲の風速の80%未満程度であると思われる
  • 単純に人が近づくと危険だから2m/sでも気をつけろよ!という忠告

最後の予想は誰でもわかることだと思いますが、上の2点はまあまあ良い考察だと思います。自分ながら。

空力特性の規模を示す『レイノルズ数』

さて、ここまで求めた条件からさらに考察を深めていきます。

まずは環境を簡易モデル化することによりレイノルズ数を導出します。

レイノルズ数は以下の数式で求められます。

$$Re=\frac{\rho v L}{\mu}=\frac{v L}{\nu}$$

$$v:物体の流れに対する速度[m/s]\\
L:特性長さ[m]\\
\mu:流体の粘性係数[N・s/m^2]\\
\nu:動粘性係数[m^2/s]\\
\rho:流体の密度[kg/m^3]$$

山頂とはいえ地上1m程の場所ですから、風速は平均5m/sあるかどうかでしょう。

特性長さは翼弦長の250mmとします。

猿倉山は標高が低いので高度0kmとし、粘性係数を1.78×10-5 、空気密度を1.2とおくと、

レイノルズ数は 85000 = 8.5×104 となります。

予想風速が低い分、10の5乗を切るほど小さくなりました。

一般にレイノルズ数が低いほどスリムな翼が用いられます。

このレイノルズ数の低さであれば、翼型も妥当といえるでしょう。

『風の城』風車の出力考察

レイノルズ数に続き、風車の出力を考察していきます。

風車の発電量は以下の計算式で求めることができます。

$$P=\frac{1}{2}\rho A V^3 C_p$$

$$P:発電量[W]\\
A:受風面積[m^2]\\
V:風速[m/s]\\
C_p:パワー係数$$

風速はレイノルズ数の項目で予想した通り平均5m/sとします。

空気密度も同様です。

受風面積は回転半径を1.5[m]、翼幅を3.0[m]として9.0[m2] とします。

問題はパワー係数。ここは経験則による予測の見せどころです。

風車特性の項目で触れたように、経年劣化による軸ブレや渦の影響を考慮すると、高く見積もって0.25あたりが限界だと予想します。

よって、平均発電量はP=170[W]となります。

平均風速の予測の低さがモロに影響した結果、非常に低い数字になりました。

まとめ

猿倉山の山頂にあるジャイロミル型垂直軸風車を勝手に考察した結果をまとめます。

  • 翼幅3000mm、回転半径1500mm程度で翼型はNACA0015~0021
  • カットイン風速は3m/s程度
  • 予測レイノルズ数は85000 = 8.5×104 
  • 予測平均発電量は170[W]

予測はしたものの正解がわかりません。

いつの日か記事が有名になって関西電力の方に届き、連絡が来ることを期待します。

長々と考察しましたが、ここまで読んでくれた人が果たして何人いるのでしょうか。

読破してくれた方に感謝の意を示します。

それでは。

入善の風力発電の考察はこちら。

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