目次
こんにちは!
三度の飯より風力発電機が大好きなハリボーです。
本ブログでは猿倉山にあるジャイロミル風車を本気で考察したり新型風車を設計してデザインコンペに突撃したりしました。
私が一番大好きなのは上記したような垂直軸風車ですが、一般的なプロペラ風車も大好きです。
プロペラ風車を有する風力発電所は、富山県では高岡と入善の2か所にあります。
今回は入善にある水平軸プロペラ風車をじっくりと観察に行きました。
入善町にある水平軸プロペラ風車
富山市入善町にある風力発電機は地上高100メートルをこえる大きな風車です。
青空を切り裂く白亜のタワーは付近のバイパスや高速道路のドライバーもつい見惚れる美しさ。
風車のアクセス
富山県新川郡入善町、入善浄化センターに併設しています。
Googleマップでの名称は『入善浄化センター風力発電設備』です。
入善浄化センター風力発電機の見どころ
入善の風車は道路を挟んで日本海に面しています。
海のすぐ近くゆえに強烈な海風によって非常によく回ります。
風車のタワー入口付近には風速と発電量が表示されています。
私の訪れたタイミングは風速10m/s、発電量約1300kWを記録していました。
青空を裂く白い風車の美しさ
どこから見ても美しいプロペラ風車ですが、真下から見上げる姿は格別の大迫力です。
風を切り裂く音からは大型プロペラの力強さを感じます。
美しいキャンバーの三次元翼。
風向きに伴うヨー角の変化。
風を切り裂く音、大きく伸びるプロペラの影。
いつまでも眺めていられます。
風車の性能を本気で予想してみた
風車を見るとスペックを予想したくなってしまう筆者。
今回はパワー係数、カットアウト風速、そして風車メーカーを予想します。
パワー係数は風速と発電量から計算できますが、それは答え合わせに用いることとし、目測からの私の予想ではCp=0.27とします。
カットイン風速は案内板によると3.0m/sとの記載。
定格風速が14.5m/sであることを考慮し、カットアウト風速は30.0[m/s]といったところでしょうか。
ナセルにはメーカー名やブランドが書かれていることが多いですが、この風車は無地です。
形状からして三菱重工や日立製作所ではないので、海外メーカーでしょう。
デンマークのヴェスタスあたりを予想します。
風力発電機のスペックを調査した結果
入善町のホームページに以下の情報が掲載されています。
- 風車ができるまで
- 風力発電機の概要
- 発電実績
入善浄化センター風力発電機の基本スペック
定格出力 | 1500キロワット |
地上高 | 103.5メートル(ハブ中心高65.0メートル) |
ローター径 | 77メートル |
年間発電量 | 約252万kWh (浄化センターの年間使用電力量相当) (一般家庭約700世帯の使用電力量相当) |
年平均風速 | 約5.2メートル(30メートル高) |
《入善町HPより抜粋》
きちんと情報公開されているのも素晴らしいポイント。
年平均風速が高さ30メートル地点の数値なので実際はもっと強いでしょう。
さらに詳しい情報は風力エネルギー学会のジャーナルに載っていました。
以下の資料がJstageで閲覧できます。
“入善浄化センター風力発電所の紹介”, 入善町役場企画財政課, 風力エネルギー学会ジャーナル, 2008 年 32 巻 2 号 p. 153-155
入善浄化センター風力発電所の概要
発電の用途 | 入善浄化センターへの電力供給 |
事業費 | 3億9千万円 |
着工 | 平成18年6月 |
竣工 | 平成19年11月 |
風車機能 | ドイツGE Energy社 |
風車のメーカーはGE Energyでした。予想のヴェスタスは外れ。
さらに風車概要も詳しく載っています。
jstageより抜粋した風車概要
風車型式 | 水平軸プロペラ式可変速型風車 |
ブレードの材質 | GFRP |
タワーの材質 | 鋼製 |
タワーの形状 | モノポール |
増速機 | 1:78 |
カットイン風速 | 平均風速:3.0m/s以上 |
カットアウト風速 | 平均風速(10m):25.0m/s以上 平均風速(30s):28.0m/s以上 平均風速(3s):30.0m/s以上 |
設計耐風速 | 55m/s-3s 定格回転数 18.4回/m |
発電機形式 | 巻線型誘導発電機 定格出力1500kW 定格電圧575V 周波数60Hz |
カットアウト風速はほぼ予想通りでした。
風車サイズからある程度限られてくるので、このあたりを大きく外れることはないでしょう。
風力発電機の発電能力
上記資料によると、風車の発電量は年間252万kWh。
この発電量はCO2削減量に換算すると約950t/年、原油削減量に換算すると約65万L/年の環境効果が得られるとのこと。
平成19年度は計画発電量を上回る発電量を記録するなど特に好調だったようです。
年間発電量は稼働率が大きく影響します。
先述した「パワー係数」は風車本体の指標なので、稼働率を含めた年間発電量から計算すると数値が大きく下がってしまいます。
そこで今回は私が訪れたタイミングでの瞬間的な風速と発電量からパワー係数を導出してみます。
パワー係数の計算式は以下の通り。
$$P=\frac{1}{2}\rho A V^3 C_p\\
\\
P:発電量[W]\\
\rho:空気密度[kg/m^3]\\
A:受風面積[m^2]\\
V:風速[m/s]\\
C_p:パワー係数$$
発電量は1337kW、風速は10.4m/s。
空気密度は1.2とします。
ブレード直径77mより受風面積は4,626m^2です。
以上の条件からパワー係数を導出します。
私の予想はCp=0.27でした。
計算結果は、、、Cp=0.42!
予想を遥かに上回る素晴らしい性能です!圧倒的な発電効率!
流石はGE energy!
もちろん、瞬間的なパワー係数なので必然的に高くなります。
案内板表示のサンプリングも不明なので誤差はあるでしょう。
それでも素晴らしい性能を有していることは間違いありません。
感動して絵を描いてしまいました。
引き続き高岡の風力発電機も考察したいと思います。
風力発電の魅力に気付いた方は紙工作で学ぶ風力発電もどうぞ。